アンティーク
「うん、よかったよ。つい聴き入った」
「そんな風に言ってくれるなんて、嬉しいです」
将生の隣で、とりあえず笑ってはいるものの、心の中はそんなに穏やかではなかった。
彼女の彼を見る目が潤っていて、頬も微かに紅潮していて、それは恋をしているような表情だ。
「レオくん、どうしたの?」
その目はいつの間にか、僕を向いていた。
「え? ああ、ちょっとお腹空いたなって」
「それなら、…………このあとお疲れ様会やるので、一緒に…………来ませんか?」
彼女は、何故だろうか、歯切れが悪い。
本当は、俺のことを誘いたくないけど、無理して言っているんだろうか。
「……いいよ、俺たちは部外者だし。2人で楽しんで」
そこまでして、一緒にいたいとは思わない。
俺はきっと邪魔者だから。
「そう、ですか」
それに、2人と一緒にいるなんて、今の僕には耐え切れそうになかった。
「じゃあ、俺たちは作品作りもあるから大学行くよ」
「うん……。じゃあ、また」
とにかく、一秒でも早くこの場を去りたかった。