アンティーク
レオくんは、私にその気持ちが移るほど、本当に嬉しそうに笑った。
ブルーな気持ちは一瞬で太陽のオレンジ色に変わる。
「おすすめ、この鏡かな」
手の平サイズの可愛らしいアンティークの鏡は、もちろん鏡としてもそうだけれど、アンティーク品としてその凝ったデザインが目を奪う。
「可愛い」
「将生も、この前じっとこれ見てたよ」
「将生さん……が」
まただ、あの時と同じ。
将生、という3文字に胸が締め付けられる。
レオくんと話しても、そんな風に胸がギュッとなって苦しくなることはない。
むしろ、レオくんとの会話は弾む。
だけど、将生さんとは緊張して何を話せばいいのか分からなくなるし、それにこの前の笑顔が未だに脳裏に焼きついて、心を乱す。
今更感じる、将生さんの顔の整い。
いつの間にか、私の脳内を埋め尽くすのは将生さんのことだった。
「玲奈さん?」
レオくんが私を呼ぶその声で、将生さんで覆い尽くされていた私の頭の中は、まるで何十羽という鳥が一斉に飛び立つ時のように、それは消えていく。
「あ、ごめんなさい」
「もしかして、将生のこと……」
その先の言葉は、レオくんが続けることも、私が言うこともなかった。