アンティーク
ぽつぽつと音を鳴らす雨を聞いていると、その中に店長の声が混ざる。
「レオくん」
「店長」
俺は店長に心配をさせたくなくて、無理矢理笑顔を作る。
こんなところでうじうじしてたら、いざ将生を目の前にしたときにどうなってしまうだろう。
「もう、時間じゃよ」
雨の音は、時間の感覚を狂わす。
時計を見ると、あっという間に終わりの時間が来ていた。
「あ、そうですね」
「ホットミルク、作ったんじゃがな、飲みきれなくて一緒に飲んでくれんかのお」
いつもと変わらない穏やかな声は心に響く。
「はい、もちろんです」
店長は、きっと俺に何かがあったことを分かっていてそう言ってくれるんだろう。
だから、こんな風に直接ではなく間接的に励まそうとしてくれるんだ。
その一方で、分かりやすい自分にため息が出る。
仕事中なのに、自分のことで精一杯な自分が恥ずかしい。