アンティーク
「そうじゃ、今日ご近所さんからもらったケーキがあるんじゃ。レオくん、タルトは好きかい?」
「はい、昔から好きですよ。フランスで、よくタルトオシトロン食べてました」
あの酸っぱさが懐かしく思う。
まさに、甘さと酸味のハーモニーというのに相応しいタルトだ。
初め食べた時は、その酸っぱさに目を丸くさせてしまったけれど。
「ああ、あれは美味しいのお」
店長は、話をしながらホットミルクとタルトを2セットテーブルへ運んでくる。
それは、色々なフルーツが色とりどりに乗っているタルトだった。
店長の手作りのホットミルクはシナモンが入れており、ふんわりとそれが香る。
それを飲むと、シナモンの香りを漂わせているミルクの優しい甘みは心の裂け目に染み入り、思わず涙が出そうになった。
「雨の日は、なんだか気分が沈むのお。まあ、雨の日は雨の日や良さがあるんじゃけども…………」
店長はタルトを一口食べると「うん、美味しいのお」と言う。
「そうですね。タルトって、フルーツが味わえるので好きです」
「同意じゃ。…………もう夏も終わりじゃなあ。葉が紅葉し始めておる」
「はい」
その赤色になり掛けている葉を見ると、抑えていた涙が一気に溢れてきた。