続・政略結婚は純愛のように
 だから別れましょうと言った彼女の言葉をそのまま鵜呑みにして、あっさりと頷いたけれど、今から考えるとあれも彼女の中で言葉どおりではない何かがあったように思う。
 マリアは、特に清純なイメージで売り出していたわけでもないのだから。
 何もわかっていなかった。
 多くの人の上に立ちあふれるほどの案件を同時にこなして、社長だなんだと言われても所詮は近くにいた女性の苦しい胸の内にすら思いをはせることができない、愚かで未熟なだけでしかない男。
 隆之はエントランスにとまっていたタクシーに飛び乗ると、あるホテルの名前を告げた。
 マリアが来社した日、隆之に向かって強い拒否の言葉を発した由梨のことが頭に浮かんだ。
 黒瀬が言うように、結婚のことで誰かに悪意を向けられたのであれば、守ってやらなくてはと思った。
 なぜ彼女がそれを自分に言わないのか、理解ができなかった。
 言ってくれれば二度と同じことが起こらないようにしてやるのにと。
 黒瀬には言うくせにとくだらない嫉妬までして。
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