続・政略結婚は純愛のように
バスルームの仲直り
 由梨は隆之に引きずり込まれるようにしてエレベーターに乗り込んだ。
 夜遅くということもあって他に利用客はいない。
 隆之はやや乱暴に11階のボタンを押すと由梨を腕に抱き込む。
 そして、私の部屋は5階ですと声をあげる由梨の唇を塞ぐように口づけた。

「んっ…!」

 そして、さっきまで外にいて冷えきった由梨の身体に当然のように入り込み内側から火をつけるように暴れ回る。
 突然の噛み付くような口づけに由梨は思わずのけぞるように背中をしならせた。
 隆之はそれを危なげなく片手で支える。
 しかし一切攻撃の手を緩めることはなかった。
 諍いの夜のように怒りに任せたキスではない。
 けれど由梨の全てを奪いさるような激しい口づけに、由梨の身体は燃え上がる。
 さっきまでの黒瀬と隆之のやりとりは由梨にとって驚きでしかなかった。
 けれど、以前にも二人の間で由梨を巡って何かがあったのであれば、あの諍いの夜の隆之の呟きにも説明がつく。
 黒瀬が本当に由梨を求めているとは思えないけれど、隆之はそれに激しく嫉妬しているのだ。
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