続・政略結婚は純愛のように
来春、東京発の女性向けファションブランド"ノリス"の北部一号を丸大百貨店で出すことになっているのだが、ここに来て芳雄が難色を示し始めた。
 先日の会食でもやれ海外ブランドの方がいいのではないか、価格帯が高すぎるなどといちゃもんをつけられて辟易とした。
 
「丸大からの要望は増える一方だろう。"ノリス"は何と言ってる。」

 企画一課で取り扱っているこの件は陽二は詳しく知っていて、隆之と同じように頭を悩ませている。
 何しろ大貫芳雄は北部地方の業界の主みたいなものだ。
 睨まれてはやりにくいことも多い。

「ん、まぁ。面白くはないだろうな。そっちはそっちで何とかするさ。」

いくら丸大の会長とはいえもう決まっている話をひっくり返すなど容易なことではない。
 向こうも本気で話を反故にしたいなどとは思っていないのだから、芳雄の鬱憤が晴れるまで隆之がサンドバックになっていればいい。
 本当に隆之にとって頭が痛いのは出店予定のファッションブランド"ノリス"の方だった。
 そのへんの事情も知っている陽二は眉を潜めて声を落とした。
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