続・政略結婚は純愛のように
 隆之が動いたことを眠りながらも感じとった由梨が体温を求めてすり寄ってくる。
 彼女の無垢をそのまま表すような清潔な香りが隆之の鼻先をくすぐった。
 その瞬間、幸せな夢をみる彼女に襲いかかりめちゃくちゃに抱き潰してしまいたいという凶暴な欲望が隆之の中でむくりと頭をもたげた。
 それでなくてもここ最近は忙しくする彼女の体力を慮って触れ合えていない。
 そろそろ限界だと隆之の中の獣が言った。
 けれど隆之は目を閉じてその獣を抑え込む。
 いくらなんでも疲れている彼女を起こすわけにはいかないし、この時間から襲いかかって隆之の欲を満たしてしまえば明日は彼女は出勤できないだろう。
 隆之は由梨の白くて柔らかい頬を指でたどる。
 そのマシュマロのような感触が自分の手の中にあると思うだけで、憂鬱極まりないマリアとの一日をやりすごすだけの活力が湧いてくる。
 明日が終われば久しぶりに予定のない週末がくる。
 あの酒造へ行った日のように由梨の行きたいところへ気ままに出かけてもいいし、疲れているようなら一日中家の中で彼女を甘やかしてもいい。
 マシュマロの頬にキスを落としてそんなことを思いながら隆之は眠りについた。
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