続・政略結婚は純愛のように
 マリアからの個人的な誘いとも取れるコンタクトはだんだんと頻繁になりつつあった。
 自分と別れた後の彼女の恋愛を隆之はテレビのワイドショー程度にしか知らないが、業界人を中心にそれなりに派手にやっていたはずだ。
 それなのになぜ今になって自分に執着するのだろう、理解に苦しむ。
 頻繁にある食事の誘いを全てシャットアウトするのは難しい。
 けれどしぶしぶ行った食事の席での彼女の振る舞いは目に余るものがあった。
 名家のお嬢さまとでは満足できないでしょうと面と向かって言われたときは思わず持っていた酒のグラスを叩きつけたい衝動に駆られた。
 愛人関係を結んでお互いに楽しみましょうと妖艶に微笑む彼女にはもはや昔からの友としての情も感じなかった。
 けれど、それでも。
 彼女は取引先の社長として存在する以上は表面上は丁寧に接する必要がある。
 明日は一日中マリアと一緒だ。
 隆之はもう一度ため息をついて、再びベッドへ潜り込んだ。
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