花はいつなんどきも美しく
「私、ばっかり……いや……」
「……つらくなったら、言ってね」


その言葉を合図に、私は優しく抱かれた。


「悠之介のばーか。おじさんのくせにその体力はなんだよー」


悠之介に腕枕をしてもらっている私は、一ミリも動けなくなっていた。


「ムードないわねえ」


悠之介は苦笑する。
というか、オネエ口調に戻ってるし。


「なあに?」


じっと顔を見つめていたら、微笑みながら言われた。


Sっ気悠之介は行方不明らしい。
二重人格ってやつか。


「普通に喋れるなら、そっちにしなよ。私、そのほうがいい」


決して、私は虐められたいわけではない。
ただ、あの喋り方のほうがかっこよくていい、という話だ。


「そうねえ……やめておくわ。まあ」
「ちょっ……」


悠之介は私の横腹に触れた。


「素直になれない聡美ちゃんを攻めるためなら、使ってもいいかもな」


確信犯か。
たちが悪いぞ、おっさん。


私は寝返りをし、悠之介に背を向ける。


悠之介に背を向けていいことなんてなかったけど、今の私にはこの動きだけで精一杯だった。


「聡美ちゃん、少しは自分に魅力があるってわかってくれた?」
「自信はないけど……」


もとの体勢に戻り、悠之介の胸に顔を埋める。


「悠之介のためなら、頑張りたいって思った」


すると、悠之介に力強く抱き締められた。


「さらにいい女になった聡美ちゃんを抱ける日を、楽しみにしておくわね」


そこは男口調で言ってほしかったなんて思いながら、私は悠之介の腕の中で眠った。
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