花はいつなんどきも美しく



約束を先延ばしにするのは嫌で、仕事が終わると園田雪を連れて悠之介の店に行った。


「岩本さん、岩本さん!あそこに座ってる彼、知り合いですか!?」


店に入った瞬間、園田雪はテンションを上げた。
視線の先にいるのは、真司だ。


失恋した人間ですか、あなたは。
もっと言えば、好意を利用された人間ですか。


たった数時間で、よくここまで復活できたな。


「あら、可愛らしいお客さんね。聡美ちゃんのお知り合い?」


私が真司の名前を言うより先に、悠之介が声をかけて来た。


先に園田雪の紹介をしてしまおう。


「この人は私の上司で、恋人奪った」
「奪ってません!」


被り気味に否定してきた。
本当、元気なことで。


悠之介はそんな園田雪を笑った。


「可愛い子ね」


……面白くない。


今までは気にならなかったけど、今は悠之介が私以外の誰かにそんなことを言うのが、なんだか許せない。


「そんなに怖い顔してどうしたの、聡美ちゃん」


本人は私がモヤモヤしていることに気付いているようで、気付いていない。


私は拗ねたような態度で、カウンター席に座る。


「ガキ」


真司はバカにしたような笑みを浮かべている。


「うるさい。てか真司、毎日のようにここに来てるけど、暇なの?」
「ここに来ればお前に会えるだろ」
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