花はいつなんどきも美しく
泣きそうな笑顔を見せ、立ち上がった園田雪の手首を、咄嗟に掴んだ。


「あの……?」


私に引き留められると思っていなかったらしく、不思議そうに私を見下ろす。
私は園田雪から手を離し、目の前に立つ。


「すみませんでした」


深く、頭を下げた。
私にできることはこれくらいしかなかった。


「ど、どうして岩本さんが謝るんです……?」


状況についていけていない彼は、本当にわかっていないようだ。


「私があいつとちゃんと向き合っていたら、いたずらにあなたを傷つけることもなかった。本当に、すみませんでした」


もう一度頭をさげようとすると、園田雪に体を起こされてしまった。
園田雪は目に涙を浮かべていたけど、優しく微笑みかけてくれた。


それがまた私の罪悪感を刺激する。


「じゃあ、いつか夕飯、奢ってくださいね」


それだけを言うと、園田雪は休憩室を出て行った。


おそらく、私が思っているほど、園田雪は気にしていない。
ただ、私が深刻に謝るから、気を使ってああ言ってくれたのだろう。


あれほど優しい子を巻き込み、傷付けてしまった。


やはりまだ後悔のようなものは消えてくれないようだ。


「ちょっと岩本さん!雪君とどういう関係!?」


自分と愛子の飲み物を持って戻ろうとすると、園田雪の取り巻きに足止めされた。
ずっと黙って見ていたらしい。


「……ちょっといろいろ」


詳しく説明できるわけもなく、私はそれだけを言って、休憩室を後にした。
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