花はいつなんどきも美しく
だから、少しからかうようにして聞いてみる。


「うん、その通りだよ。男店主だと女性は入りにくいだろうし、親しくもなりにくい。誰とでも距離を縮めるためには、あの口調でいることがいいんじゃないかなって思ったんだ」


聞いたのはいいけど、次の質問が出てこない。
会話が途切れてしまった。


「……それで、少し話を戻すけど、デートはしてくれるんだよね?」


言葉で答えることが恥ずかしくて、私は小さく首を縦に振る。


「よかったあ」


悠之介は頬を緩ませる。
それを見て、私も嬉しくなってくる。


「付き合うのは?」
「……さっき、急すぎたって言ったくせに」


照れ隠しなのかわからないけど、なんとも可愛くない言い方をしてしまった。


「流されてくれると思ったのになあ。残念」


流されてたまるか。
そんな適当な感じでいいわけない。


「聡美ちゃんは真面目だね」
「……悪い?」


馬鹿にされたような気がして、私は拗ねたように言う。
悠之介はそっと私の頭を撫でる。


「相手に誠実なことはいいことだよ。それに、これで聡美ちゃんが俺と付き合うって決めてくれたら、本気で俺のこと好きってことだもんね」


……付き合ってって言いにくくなったじゃないか。
悠之介のバカ。
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