花はいつなんどきも美しく



会社に行くと、いろんな人が走り回っていた。


本当に緊急事態だったんだ……


「あ、聡美!」


出入口で突っ立っていたら、愛子に呼ばれた。


「ちょうどいいところに……って、どうしたの、おしゃれなんかして。あ、もしかしてデートだった?」


着替える時間なんてなくて、私はデートに行く格好でここに来ていた。


「まあそうだけど……なにがあったの?」
「明日のプレゼン資料、データが全部違ったの。数年前のもので作成してた」
「じゃあ全部作り直しってことか……でも、これだけ人数がいたら大丈夫なんじゃないの?」


ここですぐに取り掛かろうとしないあたり、まだここにいることに納得できていないみたいだ。


「作るのは、ね。でも、データ資料が見つからなくて」
「……そんなことある?」


いや、見つからないことはあるだろう。
私が信じられないのは、ないことを知っておきながら、別のデータで資料を作成していたことだ。


報告の一つくらいすれば、こんなことにはならなかっただろうに。


「あったの。で、今はみんなで資料探し中」


それは確かに一人でも多いほうがいいだろう。


「……これは午前中に帰るのは無理だな」


あの嘘つきめ。
嫌がらせかと思うぞ。
< 60 / 79 >

この作品をシェア

pagetop