花はいつなんどきも美しく
「さてと。邪魔者は大人しく消えますか」


帰っていくついでに真司は私の髪をぐしゃぐしゃにした。
せっかく整えたのに、なんてことをしてくれる。


そう思っていたら、真司がプレゼントしてくれた万年筆が目に入った。


「真司、万年筆」
「やる」


どうするの、と聞く前に言われた。


万年筆なんて高いもの、もらえるか。


「彼氏ができたお祝いってことで。受け取っとけ」


……返しにくくなってしまった。


「真ちゃん」


これ以上言うことがないと、真司が去っていくのを黙って見送ろうとしていたら、悠之介が呼び止めた。


「……なに?」
「また、店に来てね。待ってるから」


真司は驚いている。
と思ったら、呆れたように笑う。


「気が向いたらな」


そして真司はそのまま帰って行った。


「あれは来ないね」
「まあ……好きな人と好きな人を奪った人がいればね」


わかってて言ったのか。
意地が悪いな。


「でも、このまま真ちゃんと話せなくなるのは寂しいと思わない?」
「……それは、まあ」


幼馴染だし。
寂しいのは寂しいけど。


気まずいのだって事実だ。


「……恋愛って難しいね」
「誰かが幸せになれば、また別の誰かが傷付く。そういうもんだよ」


そうだとしても、私はみんなが幸せになれる方法があればいいのにと思ってしまった。
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