さよなら、片想い
「もう一度言って」
「……岸さんが大事」

 なんだか目が逸らせないまま、思考を巡らせて言った。
 岸さんがゆっくり近づいてキスをした。
 唇が一回掠るように短く触れて離れ、終わりかと思ったら違った。
 熱の籠もったキスを繰りかえされる。

「俺がどうして怒ったのか教えようか。嫉妬だよ。ただ嫉妬しただけ」

 頭がぼうっとしていた。残響となって引っかかった。

「嫉妬って……岸さん、私が好きなんですか」

 額と額がぶつかる。

「好きだ」

 岸さんが額をぐいぐい押しつけながら言うものだから笑ってしまった。

「なにやってんですか」

「なんでもない」

「当ててみせましょうか。『お前も言えよこの野郎』みたいな?」

「知るか」

「まあいいか、はずれでも」

 私もシートから大きく身を乗りだして、岸さんの首に抱きついた。

「岸さん、大好き」
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