さよなら、片想い
「さすがに話上手ですね」

 本日の総括のように私が言うと、岸さんが瞬きをする。

「誰が」

「岸さんが」

「どういう意味で」

 心を突いて出た言葉だったから、実は私もよくわかっていない。
 考えてみた。


「場数踏んでいそうというか、手慣れているというか」

「俺がイケメンだから言ってるの?」

 吹きだしてしまった。

「自分でイケメンとか。ウケる」

「なんでもいいけど、送ってくよ」

 岸さんのあとを追うあいだも、しばらく笑いが収まらなかった。



 送るというのはバス停までかと思ったら違った。
 バイクで自宅の近くまで運んでもらった。

「乗せてもらうの初めて」

 言われるがまま降り、ヘルメットを外す。
 自分の顔が紅潮しているのがわかる。
 流れる景色とバイクの振動や速さに興奮していた。

「怖くなかった?」

「最初は少し。途中からはもう、速くて。刺激が強くて。家まで一瞬だった」


 ふわふわ、くらくら、地に足がついていない感じがする。
 ふにゃりと笑っている。

「ジーンズでよかったー。これならいつでも乗せてもらえますね!」
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