ねぇ・・君!
結納が整った時
ある日のこと、英明が清香との婚姻届を
出したことを受けて、英明の両親と
清香の両親とで話し合いの場がもたれた。
英明は、自分の両親と清香の両親に
勝手に婚姻届を出したことをわびていた。
清香の両親は、清香は一度結婚が
破談になっただけあって、
このまま二人を一緒にして
やってほしいと英明の両親に
嘆願していた。
英明の両親は、清香が素直な優しい
心遣いを持った女性に育ててくれたことに
感謝をしてぜひとも英明の嫁として
迎えたいと言ったのだ。
しかしながら、英明が再婚だけあって
結婚式はできないことをふびんに
思っていた。
それぞれの両親の気持ちを聞いた
英明は、それぞれの両親に言った。
「オレは、清香と結婚が
できるならそれでいい。
結婚式の必要はないと思っている。
これは、清香も承知している」
「英明、清香さんは初婚だ。
清香さんのためにも、
きちんとした形で結婚をしたらいい。
清香さんと付き合ってきた時のおまえは、
一点の曇りもないのがわかった。
過去に清香さんを命懸けで
守ったのだから、これを機会に
過去を忘れて、清香さんと
幸せな家庭を築いてほしい」
「おやじ、オレの再婚を
許してくれるのか?」
「英明、清香さんを幸せにしてやれ。
清香さんは、おまえが望んでいた
家庭を築いてくれる。
そして、二人が幸せになって
孫の顔を見せてくれたらそれでいい。
わかってくれるな、英明。
おまえの手で清香さんに
花嫁衣装を着せてやれ」
英明の父は、わかっていた。
英明が過去に寿子と結婚をして
離婚をしたことで、恋をすることに
慎重になっていたことがあったこと。
そして、清香に出会った時に
近い未来に清香と生涯をともに
生きていきたいと願っていたことを
知っていたのだ。
「広瀬さん、お宅のお嬢さんは
素直なお嬢さんです。
私どもの息子が良いというのが
わかります。
お嬢さんを、息子の嫁として
迎えさせていただけますか?」
「長野さん、一度は結婚が
破談になった娘ですが、
よろしくお願いします」
こうして、両家の話し合いが終わった。
そして、大安吉日となったある日のこと。
英明と清香は、正式な結納を整えて
結婚式を挙げることになった。
清香にとって、
夢のような出来事であった。
一度は、結婚が婚約破棄で破談となった
自分を妻として必要としてくれた。
そのことだけでも感謝しているだけに
結婚式は夢のようであった。
「清香、これで正式に結婚をしている
ことを知らせることができる。
これからは、夫婦で天寿を全うするまで
ともに生きていこう」
「英明さん、これからも
よろしくお願いします」
あとは、言葉が出なかった。
清香にとって、
幸せ過ぎてうれしかったのだ。
そんな清香を、英明は
自分の腕の中で抱きしめていた。
英明にとって、愛しい女性との
結婚がかなっただけあって、
必ず幸せにしてみせると
決意を新たにしていた。
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