ねぇ・・君!
山茶花の咲く道と焼きイモのぬくもり
季節が冬に変わり、
暦も12月になろうとしていた。
この時、清香は妊娠7カ月の
身重になっていた。
清香は、来年の3月に
出産をむかえることで、
英明は無事に子供が
産まれてくることを願っていた。
ある日、英明と清香は
二条城を散策していた。
二条城では、ちょうど山茶花が
見頃であることから二人で出かけたのだ。
「山茶花がきれいに咲いている。
来てよかった」
「清香、もうすぐ産まれるな。
ここまで、育ってよかったよ。
あとは、無事に産まれてくるのを
待つだけだな」
「英明さん、私も無事に
産まれてきてほしいと思っているわ。
子供が産まれるまで、あなたを
ひとりぼっちにしてごめんなさい」
「それは、言わない約束だ。
おまえが、無理をして子供に
もしものことがあったらと思って
おまえを実家で養生をさせたんだ。
オレのことは、心配するなと
言っただろう?」
英明にとって生まれてくる
我が子を抱けるのを楽しみにしていた。
前妻の寿子との間に
子供がいなかったことから、
再婚をした今の妻清香に
子供ができたことは英明にとって
大きな喜びであった。
「清香、オレの子供を何も心配しないで
産んでくれ。オレは、それで十分だ」
「英明さん」
「おまえとは、最初は上司と
部下で接していた。
それが、いつのまにか
おまえを一人の女性として
生涯をともに生きていきたいと
願っていた。
やがて、男女の関係になった時は
うれしかった。
心の底から愛することを、
おまえがオレに呼び戻してくれた。
おまえは、前妻との離婚をあえて
聞かなかった。その優しさが
オレにおまえとの再婚に
背中を押したと思っている」
「英明さん」
「清香、愛している。
おまえと出会ってオレの妻になって
支えてくれて幸せだ。
今度は、初めて我が子を手に抱ける
幸せをもらったんだ。
もう、それで十分だと思っている」
「あなた、私はあなたに出会えて
幸せです。こうして、赤ちゃんを
産むことができる幸せをもらいました」
清香にとって英明は、
かけがえのない存在であった。
過去に破談になった元婚約者から
ストーカーを受けていた時に
命がけで守ってくれた人であった。
それだけに、今清香のおなかにいる
子供を産む幸せをもらったことに
清香は英明に感謝していた。
「おいっ、清香。焼きイモを食うか?」
「食べたい。あたし、焼きイモは
大好きなんだ」
ちょうど、歩いている時に
焼きイモを売っているトラックが
二条城の出入口に止まっていた。
清香と英明は、焼きイモを
2つ買うと休憩室で食べていた。
「おいしい」
「焼きイモは、冬のごちそうだな」
英明は、そう言うと清香と二人で
焼きイモを食べていた。
きっと、焼きイモの温かい温もりが
これからの二人を幸せに
導いてくれるだろう。
まもなく、曆である12月が
暮れていくだろう。
そして、来年は家族が増える
喜びにひたって行くだろう。
英明と清香の未来予想図を
幸せになっていくことを
願ってやまなかった。
< 37 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop