ねぇ・・君!
妻が編んだ手編みのセーター
2月になってもまだ寒い日が
続いていたある日のこと。
京都の実家にいる清香が、
英明のために
手編みのセーターを編んでいた。
セーターは英明の好きな
コバルトブルーの毛糸で編んでいた。
その手編みのセーターが無事に完成した。
「やっと、できた」
「ステキな色ね。
英明さんの好きな色なの?」
「そうなの、お母さん。
彼が私服に好んで着ていた色なの」
「英明さんが喜んでくれるといいわね」
そうとは知らない英明は、
いつものように清香の実家に来ていた。
この時に清香は、出来上がった
手編みのセーターをラッピングをして
メッセージカードを添えていたのだ。
「清香、もうすぐ産み月になるな。
子供が順調に育ってよかったよ。
こうして、我が子を抱くことが
できるんだからな」
「あなた、私は幸せです。
今は、赤ちゃんが無事に
産まれてくれるのを待っています。
あなた、バレンタインデーには
早いですが渡したいものがあるの」
「えっ?バレンタインデー?」
「そう、私たちの
初めてのバレンタインデー。
それでね、あなたにプレゼントがあるの」
清香は、英明にそう言うと
ラッピングをしていた
手編みのセーターを英明に渡していた。
そう、この時はバレンタインデー。
お店にチョコレートが売られているが、
英明は甘い物は苦手である。
そんな英明に清香は得意な編み物で
手編みのセーターを
編んであげることであった。
英明は、清香から受け取った
ラッピングバッグをあけていた。
ラッピングバッグの中に入っていた
清香の手編みのセーター。
それも自分が好きな色の
毛糸で編んでいた。
そして、メッセージカードを
読んでいた英明は清香に感謝していた。
「清香、ありがとう。
オレにとって最高の贈り物だよ。
子供が産まれて
家族が増えていくだけでも
幸せだと思っていたのに
こうして、おまえから
手編みのセーターをもらうとは
思わなかったよ。
おまえの温かい心遣いは、
結婚前と変わらないな。
清香、おまえを
妻に選んでよかったよ。
こうして、家族を
持ちたいというオレの気持ちを
わかってくれるんだから」
英明にとって、前妻である寿子に
子供ができなかっただけに、
再婚した今の妻である
清香に子供ができたことは、
大きな喜びであった。
そして、産み月が来月となったことで
英明は初めて生まれてくる
我が子を抱ける幸せを
清香からもらったことに感謝していた。
そして、二人には初めての
バレンタインデーに、
清香から手編みのセーターをもらった
英明は、二重の幸せを
清香からもらったと感じていた。
そして、清香が無事に
子供が産まれてくることを
英明は願ってやまなかった。
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