その青に溺れる
魔の手は忍ばない


多分、それは一日に3回。
朝起きて歯を磨くように、3時のオヤツを食べるように、夜は就寝前に。
最早ルーティンワークと化した行為は外国の挨拶のようだった。
けれど、全くフランクではないし、ましてや楽しくもない。

そしてあの食事の時以来、ジョニーとケニーは居なくなってしまった。
つまり、深夜番組を見なくなったのだ。
その原因はここ何日間かスタジオに篭りきりの彼に同行しているから。

付き人と言っても面接に来た時と変わらず、特にすることもなく立ってるだけだったが、最近になってドーナツ型の椅子が与えられた。
それに座りながら彼の頭を眺めていると、隣のソファーに座った男性が話しかけてきた。


「ね、何歳?」

そう言ってソファーの背もたれに片腕を伸ばし、斜めに座って此方に視線を投げてくる。
けれど嫌な感じなど全く無く、綺麗な肌に涼しげな目をし、少しだけ笑みを作った口元が好印象だった。

どこかで見たことあるようなベリーショートの金髪に手首の印字、直ぐに頭で検索を掛け始めるが、男性の質問で掻き消されてしまう。

「名前は?」

その言葉に思わず彼を見た。
恐らくだが、私語も禁止されている筈。
だが、何も言わないのは失礼だと思い、口を開く。

「すいません、仕事中なので私語は……」

そう言うと男性は静かに笑みを浮かべる、それは可愛くも見え、優しい眼差しは大人の落ち着きもあり、思わず見惚れそうになった。
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