幼なじみの吸血鬼くんが本気を出したら。
あの日、千代さんが死ぬ間際。

千代さんは夢を見ていた。



夢の世界は真っ暗で何もない冷たいところだった。

そこに独りでレオンの元婚約者歌子が立っていた。

歌子は変わり果てた姿をしていた。

美しい黒髪は白髪となり、高級な着物はぼろぼろの浴衣となっていた。

私がこうさせてしまったと思うと、自分が憎くて仕方なかった。

「なぜ私の来世まで呪うのですか?」

「おぬしが憎いからじゃ。憎くて憎くてたまらないのだ」

「…………私に一番強い呪いをかけてください。だから、来世の子には害を与えないで下さい」

「いいだろう」

歌子が私の頭をわしずかみにした。

「あ、あ………」

「最後だけは約束出来ぬがな」

そう言って手を離すと私は倒れた。

歌子は私の夢から出ていった。

そして私は死んだ。

歌子は私に言った。

「お前にはそばにいてくれる、愛してくれる人がいた。つまり、お前達の愛の力が試されるときなんだ。お前は私の餌食となり、死ぬが来世はどうだろうな。せいぜい楽しみにしてるぞ」
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