夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
そして車に揺られること数十分。思わぬ場所に着き、私は目を丸くする。
「市役所、ですか?」
「ああ、用を済ませてくるから待っていてくれ」
車を降りると新さんは小走りで建物の中へと消えていった。ものの数分もしないうちに戻ってくると、その手には封筒が。
きっとなにかの書類なのだろう。特に気にも留めず、ぼんやり外を眺めていると車は再び走りだした。
なんとなく沈黙に耐えられなくなり、チラリと横顔を盗み見る。
「なにかしてほしいことはあるか?」
「どうしたんですか、いきなり」
いつも強引に私を振り回していた人のセリフだとは思えず、驚いてみせると小さく苦笑された。
「いつも俺ばかりが主張してたから、たまには桃子の意見も聞かないとな。どんな願いでも叶えてやる。だから遠慮せずに言ってくれ」
どんな、願いでも……。
少し考えてから口を開く。
「テレビを観て笑い合ったり、くだらないことを話したりしたい、です」
これまで一緒にいられなかった分、今日はずっと一緒にいたい。そんな考えしか浮かばないだなんて、呆れられるだろうか。