かすみ草の花束を。
「今ここからあっち行くと目立つからさ、二人とも俺が最初に案内した道通って先に行っててくれる?」
流川先輩は小さな声でそう囁く。
「はい」
「わかりました」
私たちはそう返事して、流川先輩と別れた。
「小枝、手大丈夫?」
旧校舎に向かう最中、美羽からそう言われ、手を広げてみる。
思いきり握りしめたせいか、爪跡がくっきり残って赤くなっていた。
「うん、大丈夫。 ありがと…」
こんなの全然痛くない。
黒崎先輩は本当は頭が良くて、私と同じ脳みそなんてありえなかったんだ。
だけどみんなはそれを信じてくれない。
それがものすごく、痛い……
「あんなふうに言われたら、先輩だって傷つく…」
「今までもきっと、いろんなこと言われてたんだろうね…
それで、ずっと耐えてきたんだろうね……」
美羽の言葉に胸が熱くなった。
先輩を思うと泣きそうになる。
「先輩は…絶対幸せにならなきゃいけない。
幸せになってくれないと、困る…!」
なのに、私は結局何もできなかった。
言えなかった。
悔しい。ーー
私はまた涙が出そうになるのを下唇を噛み、必死で堪えていた。