かすみ草の花束を。


「先輩…!」

俺はゆっくり目の前のこいつを見た。

「先輩、学年1位見ました! おめでとうございます…!」

そう言って、また大きく頭を下げる。

怒ってはない…のか?

「あの、聞きたいことがたくさんあるんですけど、いいですか…?」

「…あぁ」

その、何か我慢してるみたいな顔がいつもの顔になるなら、いくらでも答える。

前は近寄ってほしくなかったし、その顔も見たくないくらいだったのに……

「1位になったのは初めてだと聞いたんですけど、それは本当ですか?」

「高校になってからは初めてだな。 1年の時はずっと、あんたに言った通りの成績だった」

「先輩は頭がもともといいんですか?」

「……」

なんかこれ…誘導尋問みたいだな。

「頭よくはないと思うけど、本気でやってこなかったのは本当」

「じゃあどうしていきなり本気出したのって話だよね~~」

聞き慣れた声がしたと思えば、正人が教室に入ってきた。

「てゆうかそれで頭よくないんだったら何? 何なの? ほんとに」

だからその絡み方やめてくれ……
俺だって失敗したと思ってる。

「本気出したとかじゃない…」

「じゃあなに?」

正人は机を移動させ、イスに座ってこっちを見てくる。


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