かすみ草の花束を。


「花咲さん、今日もパワフルだ」

「ずっと楽しみにしてたんです! 昨日の夜もワクワクしてあんまり寝れなかったんですからっ!」

美羽の隣にいる流川先輩にそう返事すると、私の隣からクックッという笑い声と共に大好きな声が聞こえる。

「小学生かよ」

そう言う黒崎先輩は口元に手をあてているが、笑顔は全く隠せてない。

…うぅ。
やめて…かっこいいから~…!
こういう公共の場とかみんな見ちゃうから~~!

もうチラホラと視線を向けられているのにはもちろん気づいている。

「純、ほんと変わったなあ~…
こういう知らない人が賑わってる場所とかいつも氷結状態だったのにさ」

氷結状態…とは……?

「…早く行くぞ」

黒崎先輩は流川先輩の言葉をスルーして、先に歩き出す。

「あっ、先輩…待って下さい!」

私は急いで黒崎先輩の後を追う。
そしてチケットを買った私たちは入門ゲートをくぐった。

動物園を選んだ一番の理由。ーー

それは黒崎先輩が小さい頃、お母さんの病気が良くなったら行こうと約束していた場所だから。

黒崎先輩が一緒に来たかったのはもちろんお母さんであり、私じゃないことはわかってる。

だけど…叶えたいと思った。

小さな黒崎先輩が叶えることができなかったことを、今からでも叶えたいと思った……


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