かすみ草の花束を。


「…もし、先輩が苦しめられるようなことがあるなら、私は黙ってられません。
もし先輩の笑顔が失われるのなら、私が先輩に関われないのは納得いかないです…!

つまり、何が言いたいかっていうと…私がそばにいるときよりも、先輩は幸せにならないと許さないってことですからっ!

これは、…宣戦布告です…!」

「宣戦、布告…?」

黒崎先輩は眉間にシワをよせ、こいつは何を言ってるんだという目をしている。

…これはある意味、賭けだ。

先輩のことを諦められない私が考え出した、最後のずるい宣言。

「はい…もし、私が邪魔でうっとおしくて大っ嫌いで…動物園で会った女の人を好きだと言うのなら、どうぞお幸せになって下さい…!」

「…!」

私がそばにいたときよりも、あの女の人と一緒にいたほうが絶対幸せなはず。
笑顔になれるはず。

「けど…もし、そうじゃないのなら…私は先輩に、思いっきり関わります…!
嫌われてても、逃げられても…先輩と約束しましたから!

私が、黒崎先輩を連れ出すって…、先輩が哀しいところに閉じこもってしまったら、必ずひきづり出すって…!
私は先輩から離れません! 絶対、ひとりにしません…! ずっと先輩のそばにいますっ!

覚悟してください…!」

「…っ…」

「それでは、お邪魔しました!」

私は目を見開いて驚く黒崎先輩にそう言い残して、先輩の部屋を出た。


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