かすみ草の花束を。


「…嫌いだって言ってんだろ? はぁ…何度も言わせんな。
今まで言わなかったけど、家族にも親友にも甘やかされて、愛されてきたやつ見ると反吐がでる。 そんなやつ俺は…大っ嫌いなんだよ」

「…っ」

「そういうわけだから、もう俺に二度と関わるなーー」

「……」

例え恋愛感情じゃなくても、後輩として黒崎先輩に少しでも好きになってもらえてたら、どんなに幸せかと。

そう思ったけど…先輩にとって私は、好きな人間でもない。
先輩の中でずっと、私は我儘でうっとおしい嫌いな後輩。

だけど…先輩、何かを隠してはいない…?

さっきの苦しそうな声は、気のせいだったの…?

もう、いい……

先輩が私のことを少しも好きじゃなくたって、嫌いな後輩だとしても、もうそんなのどうでもいい…!

私は、私が見てきた黒崎先輩を信じる。

何度も見せてくれた先輩の笑顔は、嘘なんかじゃないと、私の血が、体が、全部がそう言っている。

「わかりました…私はもう、先輩に関わりません。

だけど最後にひとつだけ、いいですか…?」

私がそう言うと、黒崎先輩の狼のような目がゆっくり私を見つめた。


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