かすみ草の花束を。


…ムカつく…あんな宣戦布告しといて……

あいつの言葉は魔法みたいだった。

いつも俺の中をかき乱して、挙げ句の果てには迷子の俺を必ず見つけ出す。

どこまでもかっこよくて、圧倒されてしまう。

「…っ!」

あいつにはずっと、花みたいな笑顔で笑っていてほしいと思った。

けど、そんな風に…俺以外の男に笑いかけんな……

くそ…っ
ムカつくのは、突き放したくせに嫉妬なんかしてる俺のほうじゃねぇか……

「純、行かないの? 花咲さん奪いに」

「行かないし…仲良さそうじゃん」

「本気で言ってる…?
花咲さんは純のことしか頭にないってくらい一生懸命だから、気づかなかったかもしれないけど…あの子は誰よりも人に好かれるよ」

そんなこと……知ってる。

「純…花咲さんがいつまでも追いかけてくれると思ってない?
何があっても、気持ちを言葉にしなくても、花咲さんは自分のことを好きでいてくれるって」

「……」

「本当の気持ちは、言葉にしないと伝わらない。
純はもう、その気持ちに気づいてるでしょ?

気づいてないって言うなら、今、イライラしてるのがその証拠だよ」

正人の言葉はスッと俺の中に入り込んでくる。


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