かすみ草の花束を。
「…持ってちゃダメですか?
先輩に初めて選んでもらったものだから…できるだけ持っときたいんです……」
「…いいけど、ほんと捨てていいから。 どうせまた買うし……」
「え…?」
「なんでもねー…ほら、帰るぞ」
先輩は私に汚れてしまったイヤリングを渡すと、またその優しい手で私を引いていく。
「今日は帰って飯食って、ゆっくり休めよ。 昨日の今日なんだから、安静にしとけ」
「…はい……」
優しい…先輩の全部が温かい……
やっぱり胸がキューっと締め付けられる。
「先輩、助けに来てくれて、ありがとうございました…!」
黒崎先輩は体を張って私を助けに来てくれた。
あんな棒を振り回す人たちから、私のために助けに来てくれた。
そして、震える私を抱きしめてくれたんだ…。
どこまでもかっこいい、大好きな先輩。
「……のは…花咲のほうだろ…」
「なんですか…?」
先輩の言った言葉が聞こえなくて聞き返すも、再び「なんでもない」と言われてしまった。
「黒崎先輩…、あ、あの…っ」
「ん?」
私が先輩の名前を呼ぶと、先輩は立ち止まって話を聞こうとしてくれる。
私の言葉を待ってくれる。
それだけでもう幸せで、今日何回目だかわからない幸せの涙が出そう。