かすみ草の花束を。
「?」
誰だ…?
相手は知らない番号だった。
そしてスマホを耳にあて声を聞いた瞬間、俺の目は限界まで開かれる。
なぜなら、電話の相手が中学以来声すら聞かなかった冬夜だったから。
『純、元気か〜〜っ!』
「……冬夜…? 記憶、もどった…?」
驚きすぎて俺は片言になってしまう。
俺のことがわかるということは、俺との記憶が戻ったということ。
『やっと、会えたな…』
「え…?」
俺は電話の向こう側にいる冬夜に対して、眉間にシワを寄せた。
『花咲小枝ちゃん』
「………っ…!?」
その一言に驚いて、座っていたベッドから一瞬で立ち上がる。
「なん…で」
知ってんの…?
『驚いた? 俺も驚いたよ〜
突然来たんだもん』
……まさか…、あいつ…!
本当に、冬夜のところに行ったのか…?
昨日あんな目にあっといて……?
まじかよ…、どこまで…っ…
『あの子が、純のずっと守りたかった女の子だよな?』
「……。…花咲、今そこにいんの?」
『今は道場に連れてきた。 興味津々で見学してる。
さっきもキラキラした目で壁面の純が取った賞状とか見てたよ』
……なんで、道場…
てゆうかあいつどうやって行った…?
まさかまた父さん…!?
『花咲ちゃんさ、俺に言ったんだ…
" 黒崎先輩は、自分のことを真っ黒で塗った優しすぎる人です "って』
スマホ越しの言葉に、ドクンとわかりやすく大きな自分の心臓の音が聞こえた。