かすみ草の花束を。
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帰りのバスが来る待ち時間、私と先輩は隣に並んでベンチに座っていた。
バス停までの道のりも黒崎先輩は黙ったまま、何も喋っていない。
話しかけたいけど、話しかけてもいいのだろうかと思っていると、突然肩が重たくなった。
「…っ…、せんぱい…?」
先輩の頭が乗っている肩がみるみるうちに熱くなっていく。
「花咲…」
「…はい…」
「……小枝」
「…っ…!?」
「…って、呼んでいい?」
「き、聞かないで下さい〜〜……」
先輩の口から聞こえる私の名前は、特別で、呼ばれると胸が飛び上がるほどキュンキュンしてしまう。
「小枝…」
「…は、はい……」
首にあたる先輩の髪の毛がこそばゆくてたまらなくて、ときめいてる証拠に、いつもは何も感じない鎖骨あたりが音を立てている。
「……ありがとう」
「……っ…」
その声はとても穏やかで、一言で黒崎先輩の思い全てが伝わってくるみたいだった。
「私は、何もしてないです…」
「…言いたいことたくさんあんのに…なんか、胸がいっぱいで…もうこんなの……、幸せだ」
「…~っ…!? い、いま、幸せだって…言いました…?」
私が驚きすぎて自分の肩のほうの黒崎先輩を見ようとすると、黒崎先輩はそのまま顔を上げて私を見つめる。