かすみ草の花束を。


「じゃあなんて呼べばいいの?
小枝ちん?小枝っこ?」

「…もう帰りますんで。 花咲、帰ろ」

黒崎先輩が私の前にしゃがむと、綺麗な先輩の瞳に私がうつっていた。

か、かっこよすぎるって……

「あ、待って待って…! 小枝ちゃんにとっておきの一枚、あげるから」

そう言って師匠さんから私の手に一枚の写真が渡される。
その写真には、かわいくはにかむ笑顔の小さな黒崎先輩が写っていた。

「か、かわ…っ!」

あまりの可愛さに反射的に手で顔を抑えてしまうほど。

「それね、純ちゃんがこの道場に通うきっかけを話してくれたときの写真だよ。 いい顔してるよね」

そう言った師匠さんは、とてもニコニコしていた。

「はい…とても、素敵です」

「それ…小枝ちゃんにあげる。 また純ちゃんと一緒に遊びにおいで」

「…! このような素敵なプレミアものを…っ、ああありがとうございます…!

ぜひまた! お師匠さん、色々ありがとうございました!」

そうお辞儀をして、くるっと回ると冬夜さんにもお礼を言う。
そして黒崎先輩を見ると、先輩は何やら師匠さんをじっと見てこう言った。

「師匠…心配かけてすいません。 ありがとうございました」

一礼した黒崎先輩は綺麗で美しくて、知らない先輩の一面が見れて、胸がキューンと締め付けられる。

「…うん…また元気な顔見せに来るんだよ」

師匠さんの目はまた少し潤んでいて、黒崎先輩にはこんなに力強い味方がいるんだということを知れた。

きっと、先輩も感じてるはずだよね…

感じてくれてるといいな……

先輩はずっと、ひとりじゃないよって。ーー


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