かすみ草の花束を。
「花束とか、俺が持ってると正人とかに笑われそうだけど…この花が、やっぱ一番小枝っぽいから」
その小さな花束を渡されて「小枝には似合う」と、黒崎先輩に優しい声で囁かれたけど、先輩だってとても似合っていた。
すごくかっこよくて、綺麗だった。
「先輩……私、先輩の、彼女になりたいんですよ…?
い、いいんですか……?」
「うん…小枝がいい」
「…!」
「俺には小枝しかいない。つーか…小枝以外無理だから、彼女とかできないんだってほんとに……」
聞こえる声はどこまでも甘くて、耳の奥のほうまでとろけそう。
心臓はバクバクと大きな音を立て続けている。
「俺は小枝が思ってる以上に小枝のこと好きだし、嫉妬はするし、泣かれて嫌だって叫ばれても、もう二度と離すつもりないから」
「……」
先輩がくれる言葉が、もったいなくて、宝箱の中にいれてとっておきたくて、幸せすぎて吐きそう……
「俺の、最初で最後の…彼女になってください」
「……っ…」
「俺が好きなのは、ずっと一生、小枝だけだ」
そう言った黒崎先輩の目が、本当に綺麗で吸い込まれそうで、優しくて、私は再び幸せの涙を流す。
「……わ~…っ! せ、んぱい、そんなのっ、…やっぱりずるいです~~…! ぷ、ぷろぽーずみたい〜……」
先のことなんてわからない。
今まで先輩は怖がられていただけで、本当は優しくてこんなにかっこいいんだってこと知られたら、もう毎日モテモテで女の子もよりどりみどりなんだから…!
そんなことはわかっているのに、どうしてこんなに胸が締め付けられるようにキューっとなるの…?