かすみ草の花束を。


「花束とか、俺が持ってると正人とかに笑われそうだけど…この花が、やっぱ一番小枝っぽいから」

その小さな花束を渡されて「小枝には似合う」と、黒崎先輩に優しい声で囁かれたけど、先輩だってとても似合っていた。

すごくかっこよくて、綺麗だった。

「先輩……私、先輩の、彼女になりたいんですよ…?
い、いいんですか……?」

「うん…小枝がいい」

「…!」

「俺には小枝しかいない。つーか…小枝以外無理だから、彼女とかできないんだってほんとに……」

聞こえる声はどこまでも甘くて、耳の奥のほうまでとろけそう。
心臓はバクバクと大きな音を立て続けている。

「俺は小枝が思ってる以上に小枝のこと好きだし、嫉妬はするし、泣かれて嫌だって叫ばれても、もう二度と離すつもりないから」

「……」

先輩がくれる言葉が、もったいなくて、宝箱の中にいれてとっておきたくて、幸せすぎて吐きそう……

「俺の、最初で最後の…彼女になってください」

「……っ…」

「俺が好きなのは、ずっと一生、小枝だけだ」

そう言った黒崎先輩の目が、本当に綺麗で吸い込まれそうで、優しくて、私は再び幸せの涙を流す。

「……わ~…っ! せ、んぱい、そんなのっ、…やっぱりずるいです~~…! ぷ、ぷろぽーずみたい〜……」

先のことなんてわからない。
今まで先輩は怖がられていただけで、本当は優しくてこんなにかっこいいんだってこと知られたら、もう毎日モテモテで女の子もよりどりみどりなんだから…!

そんなことはわかっているのに、どうしてこんなに胸が締め付けられるようにキューっとなるの…?

< 393 / 396 >

この作品をシェア

pagetop