かすみ草の花束を。
それからは、先輩の誘惑に耐えながらもちゃんと集中し、わからないところを重点的に教えてもらい、なんとか数学の範囲の問題をやり終えた。
あとは教えてもらったところを復習しながら練習問題をすれば完璧だ…!
ここまで理解できたのは紛れもなく黒崎先輩のおかげ。
スパルタと言っていたのに、先輩の教え方は数学の先生より断然わかりやすくて、不思議とスイスイできてしまった。
今まで自分は何を必死に、ひとつの問題に悩んでいたのかと思うくらいに。
どうしたら先輩に返せるかな……
私が先輩にもらうものはいつも幸せで、私も同じくらい…いや、それ以上に…!
幸せを返したいのに……
「他は? 数学だけでいいの」
「はい! 他は暗記系なので、ちょっとずつ覚えていけば赤点は回避できますので…!」
「…そ」
「本当にありがとうございました…! あ、先輩お腹すきましたよね!?」
もう時刻は午後1時になろうとしていた。
「お弁当、食べませんか?」
「はぁ…また弁当…」
「い、嫌でしたか! すみません!
じゃあ、どこかに食べに行きませんか?」
教えるという目的は終わってしまったから、先輩はもう帰ってしまうんじゃないかと思って必死につなぎ止めようとする。
先輩の時間を私のために使うことに変わりないのに、それでも私はまだ我儘を言い続ける。
"先輩と少しでも長く一緒にいたい。"
前よりもこの気持ちが大きくなっていた。