かすみ草の花束を。


俺はベンチに腰掛け、こいつの作った弁当を開ける。
いつも通り全部手作りのおかずが綺麗にギッシリ詰まっていた。
冷凍食品は全く入っていない。
だから自分のことができなくなるっていうのに……

「いただきます」

見た目通り味もうまい。
こいつが料理ができるのは意外だった。
しかも野菜もしっかり入ってるし、りんごなんてうさぎカットになっている。

りんごがいつも入っているのは、俺がりんごジュースが好きだと知っているからなのか。

「ふふ…」

隣から笑い声が聞こえたと思えば、こいつはニコニコ笑って俺を見ている。

…?

「…なに」

「あ、すいません! あまりに幸せで…お気になさらず、食べて下さい!」

「あんたも食べろよ。 じゃないと見られすぎて顔に穴があく…」

「は、はい…!」

ほんと、俺のことばっかりで嫌になる。

本当はこいつが嘘をつかないことくらいわかってるんだ。
明るくて優しくて、誰にでも好かれる。
闇なんて知らないような、俺と真逆の人間。

めんどくさくなんねーの?
なんなの?

目の前にいるこのちっこい後輩に、これだけ心をかき乱されるなんて、やっぱり俺はもうとっくにこいつに振り回されてんだ……

「…先輩…そんな、見ないで……」

食べようとして俺の視線に気づいたのか、少しうつむき気味に頬が赤くなっている。
恥ずかしそうにするその顔も、急に敬語じゃなくなんのも、いちいち……

「しかえし」

そう言うと、更に赤くなったちっこい顔がパッとこちらに向いた。

…こんな生き物は見たことがない。

地球外生命体なんじゃねぇか?


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