どうも、弟です。

後ろから、まだきゃあきゃあと騒ぐ声が聞こえてくる。


「雪くん、お願いだから下ろして……恥ずかしすぎて本当に死んじゃいそう……!!」

「先にケンカ売ったの一花だよ? 泣かすって言ったじゃん俺」

「うう……意地悪、雪くんの意地わ、……っ」


最後まで言う前に、すとんと優しく下ろしてくれる雪くん。

その表情は、悪戯が成功して嬉しそうな少年のそれだった。


「……やっぱり似合うね、それ」

「え……」


伸びてきた雪くんの手が、私の耳元にかかる髪の毛をそっとかき上げた。


「ちゃんとつけてきてくれたの、嬉しい」


それは、クリスマスに雪くんがプレゼントしてくれた、小さくてかわいいお花のイヤリング。

雪くんが入学すると同時につけるって約束したもん、つけてくるに決まってるよ。

朝起きて、一番につけたんだから。


「……気づいてたの?」

「もちろん」

「でも、私雪くんに結局クリスマスプレゼント渡せなかった…本当にごめんね」


あの日は、ただ気持ちを伝えることでいっぱいいっぱいになっていて。

プレゼントなんて、全然頭になかったよ。



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