嘘つきシンデレラ
リムジンが町の中を走る。
さっきから弟さんは黙ったまま。
リムジンが着いたのは、
一軒の家の前。
えっと、家っていうか、
別荘?
お城?
大きい。
個人の家?
門から玄関までが遠くて、
庭園って呼ぶにふさわしい造り。
夜であまりよく見えないけど、
昼みたらきっとすごく、きれいな庭。
大きな扉の前で、リムジンが止まる。
「あの、ここは」
てっきり、社長の家に送ってくれると
思っていたさとみは、戸惑って聞く。
「俺んち。兄貴んちでもあるけど」
え。
社長の実家ってこと?
「あの私、帰らないと」
こんなとこ、来れないよう。
私なんか。
「誰もいないし。
もう一杯くらい、付き合えるだろ」
また、人の意見を聞かない駿は、
さっさと家に入っていく。
どこの世界なのよ。
だだっぴろいホール。
天井が高くて、
照明がすごく明るい。
眩しくて直視できないくらい。
シャンデリア?
慌てて、
駿の後をついていく。
ほんとに、広いけど、
誰もいないみたい。
いないはずないよね?
屋敷全体、電気ついてるみたいだし。
なのに、すごい静か。
だだっ広いリビングルームには
暖炉まである。
キャビネットから出したお酒を、
駿がついでいる。
「はい」
駿が、グラスを差し出す。
さとみは受け取るものの、
口にしない。
「?」
駿がしぐさで、さとみに尋ねる。
「あ、なんか飲みすぎてしまったみたいで。
けっこう、酔ってるので」
さとみが、頬を押さえて言う。
駿さんが、
赤ワインたくさん注いでくれるから、
だいぶ飲みすぎてしまった。
いっぱい社長の話したな。
知らなかった社長のことも知れた。
うつむきかげんのさとみを、見下ろして
駿がゴクリと、お酒を飲み干す。