黒と白の境界線〜心理学者の華麗な事件簿〜
「何言ってるんですか?京さん、疲れてるんじゃ……」

袖口に遼河は触れる。京の目が鋭く光った。

「その袖口を触る行為。それは、人が動揺している時に見せるものよ」

ピタリと遼河の動きが止まる。京は口を開けた。

「私、あなたが助手になってくれた頃から違和感を時々感じることがあったの。特にあなたと食事をした時にね。なぜあなたに違和感を感じたのか?それは、この写真が全て教えてくれたわ」

京は一枚の写真を取り出し、遼河に見せる。それは、岡夏輝のカウンセリングをカフェで京が行った時のことだった。カレーを食べている彼のスプーンを持つ手を京は指差す。

「これは上手持ちという持ち方よ。スプーンを上からギュッと握る持ち方。あなたもこの持ち方よね?」

「だから何なんですか?」

「大人でこんな持ち方をするのは珍しいわ。だから記憶に残っていたの。そしたら、また同じ持ち方をする人物に出会った。こんな持ち方を大人になってもするということは、幼い時のクセが抜けていないという証拠。つまり、あなたと岡夏輝さんは一緒に暮らしていた家族なんじゃないかと思ったのよ」
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