黒と白の境界線〜心理学者の華麗な事件簿〜
女性は男性に「次の方をお呼びして」とお願いする。男性は「はい」と穏やかな笑みのまま頷き、待合室の扉を開けた。

女性の名前は、芥川京(あくたがわみやこ)。心理学者として活躍しており、診療所でカウンセラーをしたり、事件の容疑者の心理を解説したりする。

男性は、明智遼河(あけちりょうが)。京の優秀な助手として彼女を支えている。

今日も、人の心に京は踏み込んでいくのだ。



午後六時。診療所の閉まる時間だ。片付けや掃除を京と遼河は協力してする。

「そういえば、お子さんのお迎えにいかなくていいんですか?」

遼河が訊ね、京は「大丈夫。今日から主人が行ってくれることになったの」と言った。

京は結婚し、双子の子どもがいる。二人ともまだ五歳だ。保育園に通っている。

今までは京が保育園に送り迎えをしていたのだが、旦那の弘樹(ひろき)が自宅でできる仕事に転職したため、余裕を持って診察することができるようになった。
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