悪魔になった天使
楓は優雅に踊り子としての役をひたすらに演じるばかりか、汗を拭く暇さえなくただ着ている着物をはだけないように、脚と腰と腕を美しく表現していく
観客は既に酒に酔いしれているが、彼女の舞など見て見ていないのと同じである。
(この娘は一体こんな所で舞を踊って何が狙いなのか?)
1人、主催者である白髪の男性は疑いの目で見ていた。
長髪でありながら白髪の男性の耳は長く、それにしては似合わぬ黒い肌そして女性のようにきめ細かな腕のダークエルフの主催者は、舞を踊る楓に敵意を感じとっていた。
そう思っていたのは、ほんの5秒だっただろうか……あろうことかダークエルフの目に映ったのは皆が叫び逃げ惑う舞踏会の参加者達だった。そして、次の瞬間には、会場の天井だった。
(あれ……天井……?痛みは無い……ただ何が?)
自分の体が見えた時首だけが斬られたのだとわかった。だが誰が?その疑問もすぐにわかった。黒いフードを被った50人程の影達が会場に災いを運んできたのだと……その中にあの優雅に舞を踊っていた少女楓もいた事。
そしてそのフードの先黒いマントには大きくそして青く発光する[鮫]という文字が浮かんでいた。主催者である彼はその時楓という少女が何者かやっとわかった。彼女はこの黒いフードの連中の親玉であるということを

ある日璃珈は新聞に目を通していた。ある山で貴族を呼びダークエルフの長であり男爵である彼が舞踏会を主催し色々なイベントを行っていた時、黒フードのテロリストによって襲撃を受け死者80名、行方不明者122名、重傷者40名、軽傷者2名の大事件があった。という報道に目を細めて眺めている
「彼女たちが事を起こしたとしたら、輪廻様の考えはやはり分からないわ」
そう呟いた先に白と黒を象徴とした服装メイド服に包む女性がかしこまって俯く
はぁ〜っとため息をつく璃珈にまた恐れてメイドは頭を伏せる。
「ダークエルフは悪魔の使いならハーフエルフは天使の使いって古臭い言い伝えレベルの話で、滅殺を命令するなんて本当分からない……ただただ肌が黒いだけのエルフじゃない!」
傍にあった花瓶を蹴って扉に花瓶が当たるとカーン!!っと音はなったものの割れずに揺れている。それは璃珈の能力、重力と元素の変換によるものだった。
主の能力はやはり特殊すぎる。その能力は触れなくても人を灰にしたり、別の物質にして液体にしたり気体にしたりできる。今のように重力、物理運動さえも逆流動させてしまう。今の主も……[本当は実態無き姿だと言うのに]
メイドは恐怖しながらも、主の怒りにどうなだめるか、それだけを探そうとしたが、結果としては、主の恐ろしい能力を反復することしか出来ずにいた。
そんな中主の足元の影が揺らぐ気配にメイドは素早く左太ももからナイフを取り出すと、影に向かって投げつけた
「おっ!!!……と……ぁぶな〜〜」
影が直ぐに現れるや否や、ナイフの着弾よりも早く後方へと避ける黒いフードに白い狐の仮面をつけた女性
「沙百合、いい加減扉をノックして入ってくれない?毎回メイドに警戒されるの嫌でしょ?」
「むしろご褒美ですよ?」
沙百合は即時に返答し万遍の笑みを浮かべ
「だって、昨日までの任務も暇で暇で、スリルも無ければ簡単過ぎて自分じゃなく部下に全てやらせましたから」
その言葉にまた少しイラついた璃珈は睨みつけていたが、沙百合には意味が無いと分かって
「昨日の舞踏会……なぜ止めなかった、いや傍観してただけで部下にやらせたの?しかも楓に従う感じで暴走して、私の意図してない事態になってしまった事に関しての謝罪はないの?」
沙百合はそれまでの笑顔が嘘のように消え去り、真面目な顔でこう告げた
「傍観はしてないです……むしろ輪廻に洗脳されかけました。運命の改変を察知、除去されて私だけが助かったってのが事実です」
その言葉に璃珈は怒りに任せた舌打ちをした。それと同時にベッドと花瓶が爆発したように破裂したがその破片は全て気体、いや、酸素と液体窒素に早変わりして飛び散る……部屋はいきなりのこの地の最低温度-190に変わって急激な温度変化に全てが凍りつく……ただ私と沙百合様と主様を除いて
凍てつく肌にピリピリと伝わる電気の感触、そして何より凍った足元けどそれも長くはなく10秒後には溶けていき液体窒素は蒸発していく中、何故か窓はヒビ入っていたり、割れたりしている。やはり主の元素変換能力は危険すぎる
その場の2人には息さえも吸える状況ではなかった。ただ誰か主の気を抑えてくれる存在が欲しかった。
「ところで、沙百合のとこに5番目達が介入してきたって事実は本当なのね?」
主の声が聴こえてん沙百合はただ小さく……はいっと答えたそれが精一杯だった。
「これは何事かにゃ?」
その場に聞き馴染みない声、喋り方に驚いて3人一斉に声がする方、割れた窓ガラスに顔を向けた
「莉子(リス)……あなたもね「お姉ちゃん……!」」沙百合がお姉ちゃんと呼ぶ莉子と呼ばれた女性は紛れもない姉妹、長女であり主の年齢から5歳年上で2人とも同じ目の色エメラルドグリーンの瞳であり1番美しい容姿で1番綺麗な目と男達からの1番抱きたい女1位を獲得している、本業切込隊長隊長副業キャバクラ嬢……である。
それにしては、莉子が行動する時間では無いはず……
「なんの用できたの?」
璃珈が当然の質問をするが、莉子は笑いながら答えた
「5の2から報告だけ受け取ったから主にね〜」
なるほどっと呟いて莉子に向き直る
5番目の姉妹は全部で6人、そのため長女から5の1、5の2、5の3……5の6という順に長女から6女までこの呼び方は鮫風家特有だ
ちなみに私は璃里朱(リリス)。主に仕える前は奴隷メイドだった
「5の2……華からの報告ね、聞かせて莉子」
「昨日のことだけど、5番目の内でも警戒はしていたみたいなのよ〜、そしたら輪廻おばちゃまが精神関連魔法を使ったみたいなのよ〜糸状の透明な魔力を5の6が気づいて打ち消したっとか」
たしか……5番目には6女以外は精神干渉系魔法を見破ることも無効化することもできないから、あながち間違った事ではないが、これが意味するところは
「5の6……凛が使ったのね。精神干渉無力化の魔法もしくは、沙百合に持たせた魔力無効の腕輪を発動させたって事ね」
ご名答!っと言わんばかりに莉子は笑う
「さすが主様にゃ〜、話が早くて助かる〜って事で私はこれで〜」そういって出ていこうとする莉子に主が待てをかけ
「5番目に通達して……今後は勝手に介入することを禁じると。でなければ、」
「でなければ輪廻ばあちゃんとの戦になりかねないって言いたいんでしょうが、主、もう戦いませんか?あの人はもう歳ですし1000年も生きてるんです。化石ですよ置物ですよあの人。もう発言以外の力はないです。ほとんどが」
そこで莉子は空気を読んでなのか黙りこくった
沈黙が流れる。なにか、なにか言わないと気まづい空気に包まれている。誰でもいい、この空気も主のあの凄まじい圧をどうにかして欲しい
昔から主に仕えていたあの人なら……いや、麗羅ならなんと言うだろう。そして莉子にとって主は能力の解放まで手伝って貰った恩人だ。戦をしましょうよって発言が許される人ではないし、そもそも禁句だ。そう思ってる家臣は多いし、私もそうするべきだと思っている。私たち奴隷メイドを救ってくれて未だに救い続けている主に、この鮫風家の当主となってもっと良くしてもらいたい。そう願う人が主の家臣や家来として集ったのも事実。
「不敬ねお姉ちゃん。そんな事言っても私たちだけじゃ戦いにもならないし、むしろ…意義のない戦をしてもね〜」
沈黙の中でやっとそれを破る言葉が沙百合から出た。
だがその先にもう一言、いや、言ってはならない人物が出そうになるのを、私も、その姉妹も感じとってまた黙ってしまった。
「こうなるなら、零って隊を作らなければ良かったってつくづく感じさせられるね……」
主が悲しそうに言葉にする。いや泣いていたのがあっていたのかもしれない。
「……その……人の名前までは……」
主が首を横にふる。誰も口にしていなくても、それが誰なのかわかってしまう。有能であり、人を縛ることが出来る人物もしくは……鮫風監獄の創設者。あの人がいたら、ほとんどの配下を統率できたのに……
今ある戦力と人材だけで何とか動けるとこまでは動かないと、このままでは出遅れて邪神に世界を壊されてしまう。精神体が璃珈名と遭遇してから攻撃までほんの一瞬だったと聞く。奴らは私たちが動くことに警戒して脅しとしての1発だったのか……それとも開戦の合図として攻撃したのか……どちらにせよ邪神との戦も時間は無いようだ
「あの人が今どこに居るのかは今はいい。私たちは、この後輪廻様と輪菜お母様がどう動くか見定めて行動しないと行けない。」
宴に集まっていた貴族には申し訳ないが、弔いは必ずしてあげるからっとそっと目を瞑り黙祷をする姿に皆は同じように黙祷した
それを見ていた天界の神たちは、悲しさよりこの先により良い未来を開かんとする少女達の姿を見つめそして、薄らと悪の笑いをこぼしたのだった……

良ィ子タチダ、ダガモウ遅イノデハナイカナ?今マデアッタ希望ハ潰エタ……ワレラ神ノ導キモ力モ借リラレズ無クナッテイルノニ、モシヤ、オ主ラ二正気ガアルトハ思エナイ……SCPノ力ヲモテバコノ世ハオ主ラニ壊サレヨウ

世界の破滅にて待つBy邪神の遣いゼウスより現世の子供たちへ
~完~
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