mariage~酒と肴、それから恋~《7》
「堅いねぇ、ダメだよそんなんじゃ」
「おーい、一人かわいそうな子いるから、誰かいい男紹介してやんな!」
大きな声で店の中に呼びかけるように
茶化しながらゲラゲラ笑うABC。

もーーー、めんどいなぁ!!
そんなに独身三十路が、かわいそうか!
すみませんねぇ!モテなくて!

そのとき、ゴトッと硬質な音が響いた。

加地くんが、空のグラスをテーブルに強く置いた音だ。

「あ、すんません。手が滑って」

眉根を寄せた不機嫌な顔で発せられた抑揚のない声に、気圧されたのかおじさんたちはピタッと黙った。

「つか、何、かわいそうとか。どこ目線だよ、失礼だろ」

しーーーん。

…無愛想なお兄さんの低い声は迫力あるわ…。

怒ってる?

「加地くん、ごめんね?騒がしくて…」
恐る恐る空のグラスに、残りの瓶ビールをつぐ。

「どうも」
ぐっと飲み干して、加地くんは立ち上がってレジへ向かった。

もしかして、もしかしなくても、助けてくれた…?

栄子さんがレジに駆け寄る。
「加地くん、いつもありがとね~!」

「ご馳走さま」

店を出ていく加地くんの後ろ姿を目で追う。
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