mariage~酒と肴、それから恋~《7》
結婚は興味ないって言い切る加地くんには、中途半端なあたしの気持ちは理解できないだろうけど。

「いちいち反論して場の空気を壊すのもなんだし。
もう適当に笑って聞き流すしかないか…って、今日初めて話す人に何言ってんだろうね、あたし」
自分で言って苦笑い。

黙ってあたしの話を聞いてた加地くんは、ばつが悪そうに首をかいた。
「…なら、空気悪くして、かえって悪かったな」

「ううん、違うの!」
あたしは顔の前で手をぶんぶん振った。
「嬉しかったの!」

嫌なこと言われても、受け流すことには慣れてたけど、助けられることってあんまりないから。
びっくりして、嬉しかった。

「加地くんのおかげで、おじさんたちも、言い過ぎたって謝ってくれたんで!
だから、ありがとうございました!」
全開で笑いかける。

「…そっか。良かったな」
ふっと目を細めて、唇が微笑んだ。

加地くんて、とっつきにくそうだったのに、笑うと雰囲気が変わる。

無駄に愛想笑いしない人の笑顔って、いい。
< 19 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop