冷徹社長の初恋
ここが、春日さんが普段働いている場所なんだ……

「さあ、こちらですよ」

連れて行かれたのは、重厚そうなドアの前。清水さんがノックをして、声をかけた。

「社長、町田さんをお連れしました」

「入ってもらって」

清水さんがドアを開けて、私を通してくれた。
部屋の中央には、向かい合わせのソファーと机が置かれていた。その奥には、大きな机が置かれていて、春日さんはそこでパソコンに向かって、何やら難しい顔をしている。

「失礼します」

邪魔をしてもいけないと思い、控えめに声をかけた。

「ああ、絲。よく来てくれた」

春日さんが、先ほどまでとは打って変わって、にこやかな笑みを向けてくるから、胸がドクンと跳ねた。

「絲。悪いが10分ほどそこに座って待っていてくれ。
清水、飲み物を頼む」

「承知しました。さあ、町田さん、こちらでお待ちください。コーヒーでよろしかったですか?」

「あっ、はい。すみません」

春日さんは再びパソコンに視線をもどすと、また眉間にシワを寄せていた。
私はソファーに座って、おもわず部屋の中を見回した。春日さんの部屋は、置かれているソファーや机等はとても高級そうな物だけど、いかにも高そうっていうような、絵画とか置物なんかはなかった。本当に必要なものだけがそろえられているという感じだった。
唯一の置物といえば、部屋の隅に置かれた観葉植物だけだった。

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