冷徹社長の初恋
翌、日曜日。
私は、自宅マンションですごしていた。何をしていても、春日さんに抱きしめられたことを思い出してしまう。それから、唇に触れられたことも。
そこにどんな意味が込められているのか、どうしたってわからないのに、悶々と考えてしまう。

何も手につかず、目の前に広げた教材をボーッと眺めていたら、スマートフォンの着信音がなった。川原先生だ。休日に電話がかかってくるなんて、珍しい。何か問題でもあったのかもしれないと思い、急いで出た。

「もしもし」

「もしもし、町田先生。今、話しても大丈夫?」

「はい、大丈夫です。何かありましたか?」

「ああ、ごめん。緊急な用事じゃないから、焦らなくていいよ。昨日、あの後大丈夫だったかと思って」

「あの後?」

「春日さんと出ていった後だよ」

「あっ、ああ。特に何も問題はなかったですよ。一つ頼まれごとはされましたけど」

「頼まれごと?」

川原先生の声に、若干訝しげな色が混ざる。

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