続・カメレオン王子とひとりぼっちの小鳥ちゃん

『礼音くんに釣り合う女になれたとでも
 思っているの?』



 思っていない……

 それでも、
 礼音くんの隣にいたいの……

 礼音くんが私の傍にいてくれる間だけでも。



『目立たない地味な服を着ると落ち着くくせに、
 礼音くんが選ぶ原色使いの服、
 好きで着ているの?』



 私の好みではない……

 でも、礼音くんが可愛いって
 言ってくれればそれでいい



『本当は小説が読みたいくせに、
 ファッション雑誌ばっかり読んで、楽しい?』



 楽しくは……ない……


 でも、私が可愛くなるたびに、
 礼音くんは喜んでくれる。

 礼音くんが私に微笑んでくれるためなら、
 興味がないファッションやメイクも、
 勉強しなきゃ。




『最後に一つだけ?
 自分の心についている嘘は、
 一生続けていくつもり?』



 ……
 
 私はこのまま、
 礼音くんの好きな女性像を、
 一生演じられるのかな……



 礼音くんの意見が自分の考えと違っても、
 礼音くんに合わせて生きていけるのかな……



 それって……
 ただの都合のいい女だ……



 いつの間にか私は、
 礼音くんの波長に合わせようと必死の、
 カメレオンになっていたってことかな……



 少し開いている
 ウォークインクローゼットのドアから、
 礼音くんの旅行カバンが見えた。



 そうだった……



 今日礼音くんはあの綺麗な人と、
 旅行に行っちゃうんだった……



 私の居場所は、
 もうここにはないんだ。



 私は大好きだったこの温かい手を
 そうっと放した。

 
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