金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
川を隔てた町並みの向こう側に海が見える。

水面がお日様にキラキラ光る。

私たちの気持ちとは裏腹に……静かに、穏やかにキラキラして美しい水面。

「もう…会う必要ないでしょ。別れたんだから。」

「菜乃の本当のお父さんとも…もう会わないの?」

「菜乃…?やっぱり大丈夫?今日、変だよ。」

私は、遠くのキラキラを見つめてママとは違う所を見る。

「変じゃないよっ……。ママはそうやって自分が失敗すると全部0ゼロにしちゃうから。

私まで0ゼロになっちゃう。

パパも、ゴウちゃんも東京の友達も…元カレも。」

「ママのせいだって言うの…?」

「違う…そうじゃなくって…。」



「私はね…菜乃を0ゼロにはできないのっ!!」


それって…

愛情?

それとも…?

邪魔ってこと?

どういう意味?


「菜乃のせいで色々我慢してるんだからっ!生意気、言わないでっ!!」

ママはベンチから立ち上がって私を見た。

やっと…こっちを見た。

やっぱ…邪魔だって事…?

「ママ…私、後で帰るっ。
もう本当に平気だから、心配しないで…。」

私はカバンを肩に掛け直すと、バス停から走り出した。


「菜乃っ…!! 菜乃花っ!!」


ママには幸せになって欲しい。

どんなに府に落ちない愛情に振り回されたとしても、ママには幸せになって欲しかった。

小さい頃から、知らぬ間にプログラムされたのかな……それとも、人間はそういう生き物なのかな…?

ママが幸せそうだと、私も幸せに感じた。

だから、どこへでも行けばいい。

新しい彼氏の所へでも、どこでも。

彼女が幸せだと感じるなら……。


私は、遠くから小さく見えるバスとは逆の方へ走り出す。

ママの私を呼ぶ声なんて…放り投げて…

下り坂を全速力で走った。




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