金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.

*。*○ 迷える町… *。⚪︎。

         ✴︎。
         ○✴︎
○°・
◯・
◯*

夏の蒸し暑さが絡んでいた身体に、風が通る。

もっと解放されたくて…解き放たれたくて、制服のリボンをむしり取る。

…ボタンの弾ける音。

ブラウスの胸元が少し開いて、汗ばむ首筋にぱぁ…と風が滑り込む。

この橋を渡ったら…バスとは逆の道を行こう。

山の麓から、川を越えて…ショッピングモールの見える方向へ私は大通りを避けて向かうことにした。



知らない町。



どこの路地に入っても迷うのだから…

どこでもいい。

はぁ…はぁ…

バスに乗ったママから私が見えなくなれば、それでいい。


私は知らない町の一番細い路地を曲がって、走るスピードを緩めた。

はぁ…はぁ…

息を切らせて…フラフラと、それでも足を前へ進める。

大通りから角を曲がったそこは、一歩踏み入れると古い民家が建ち並ぶ。

静か…。  ふっと静か。

昭和の佇まいの一軒一軒に、人の生活が近く感じる。

その感覚に不思議と呼吸が鎮まった。


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