金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
隠すこともなく…干された納屋の洗濯物。

洗面器に水をはって冷やされるスイカ。

大きな丸いザルに、キレイに並べて乾燥するしその葉。

乗り捨てられた三輪車。



………マップ……そうだ、マップ。



私はスマホを手にして唖然とする。

「………!!圏外って。初めて見た…そんな所、日本に今時あったの?」

いや…そんなはずはない。

スマホまで…私を置き去りにすんの…!?

私は道の先の明るく日の差す方へ…モバイルの電波を探す。

まさかの…スマホ、ここで壊れる?!?!

嘘、嘘、嘘ぉぉーーーー。

スマホまでいなくなったら…私、ホントに1人ぼっちじゃんっ!!

窓が開いているのか…どこからか聞こえるテレビの音。

バラエティではなくて、淡々と読み上げられるニュースだと思う。

焼鮭の匂い?

それに混ざって…ふわりと金木犀の香り。

本物?それとも?芳香剤……?

人の気配はするけれど、ひとっこ1人いないこの道で誰かにすれ違ったら…会釈しないと気まずいくらい都会には無い特有の空気に、びくびくしながら前へと進む。

レトロな民家が途切れた先に、陽だまりを見つけると…そこにはセメント工場が廃墟になってそびえていた。








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