金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
命のギリギリで広斗が無我夢中で叫んだ言葉に涙が溢れてきた。


私…生きてる。


止め処ない涙を上手く拭けないでいる…けれど間違いなく私は息をして、生きている。

「菜乃……?菜乃花? あぁ……目が覚めたの……っ。」

病室の扉を開けてママは、私が天上をじっと見つめていることに気付いて手にしていた花瓶を慌ててサイドテーブルに置くと駆け寄ってきた。

「菜乃っ!菜乃っ!分かる? ママのこと分かる?」

「ママ……。私………」

ママは泣きながら私を抱きしめると頭や頬を撫でた。

「菜乃のバカっ!なんで…なんでプールになんか飛び込んだりしたの…このまま目を覚さなかったら、
ママ…ママね…生きていけない……
菜乃がいないと…生きていけないよ。」

「ママ……ご…めん。ごめんね。」


思い出した。

学校の裏の…町民プール。

死にたかった訳じゃない。

ただ、少しだけ… 消えたいと思った。

自分の罪から…逃げたかった。


「私、あの日からずっと…ここに…?」

私は調度、目の前のカレンダーの斜め線を見つめる。

カレンダーには、令和の元号。

8月24日。


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